物を見る
こんにちは、とんぼです。
とんぼが読んだことのある本に、こんな一節がありました。
あなた何かを見よう見ようってしてるのよ、まるで記憶しておいて後でその研究する学者みたいにさあ。小さな子供みたいに。(略)リュウ、ねえ、赤ちゃんみたいに物を見ちゃだめよ。
この警告をされたリュウという少年は、暴力やドラッグにまみれた異常な世界のなかで、ただそこにい続けて、目に入ってくるものをただひたすらに見ています。
彼に対して恋人のリリーは、そんなことをしていたらふつうじゃいられないのよ、と警告するのです。
とんぼは最近、自分は自分自身に関するあらゆる出来事を、遠くから傍観しているようなところがあるなと自覚することがありました。かなしいことが起こっても、怒っていいようなことが起こっても、みんなに共通することで言えばCOVID-19のせいで理不尽な目にあっても、感情を動かさないように、心が揺さぶられないようにしている。
これは、見よう見ようとして見過ぎているのでしょうか、それとも目をつぶって見ないようにしているのでしょうか。
どちらも、きっといつかだめになるのでしょう。
だって、リュウは物語の最後、狂ったように苦しみました。
見るものを選ばなくてはいけない。そして選んだものはしっかり見なくてはいけないのだと思います。これは、自分に関する出来事だけではありません。世界中の汚いもの残酷なもの、なんでも見ることができる時代になってしまったから、もっとわかっていなくてはいけないのです。
ちいさなとんぼの感想文でした。 それでは。
とんぼ
引用は『限りなく透明に近いブルー』(村上龍)から